PMP資格とは?取得のメリットと難度、勉強方法と勉強時間について解説

PMP資格とは、プロジェクトマネジメントの知識や能力を客観的に証明する国際資格です。プロジェクトを指揮したり管理したりした経験があるビジネスパーソンならば、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
PMP資格は、新規事業立ち上げやDX推進などに不可欠なプロジェクトマネジメントのスキルを証明するものとして、世界的に注目を集めています。ただ、PMP資格取得の具体的なメリットのほか、難度や勉強に要する時間なども気になるところです。
この記事では、PMP資格の概要と取得した場合のメリットのほか、試験の難度と効率的な勉強方法について解説します。
PMP資格とはプロジェクトマネジメントに関する国際資格のこと
PMP資格とは、プロジェクトマネジメントに関する専門的な知識や能力、十分な経験を有していることを証明する国際的な資格です。正式な名称は「Project Management Professional:プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル」で、アメリカのPMI(Project Management Institute:プロジェクトマネジメント協会)が1984年に創設しました。現在も、PMI本部が資格の認定を行っています。
グローバル化するビジネスシーンにおいて、プロジェクトマネージャーは業種・職種を問わずニーズが高く、極めて市場価値の高い人材として認知されています。しかし、プロジェクトマネジメントスキルというものは言語化しにくい能力です。PMP資格は、そのスキルを持っていることを客観的に証明する資格のため、注目を集めているのです。
ちなみに、PMI本部が2021年に公表した「PMI人材ギャップ・レポート(PMI Talent Gap Report)」では、2030年までに2,500万人のプロジェクトマネージャーが世界規模で必要になると予測しています。このような背景から、PMP資格の取得者は世界的に見て増加傾向にあります。「PMI日本支部アニュアルレポート 2023」によれば、2023年12月末時点では、全世界で約145万人がPMP資格を取得しました。日本では、約4万5,000人が資格保有者です。
ここでは、PMP資格受験に関する詳細について解説します。
PMP資格の受験要件
PMP資格を受験するには、2つの要件を満たす必要があります。
1つは、申込みの前に8年間にわたるプロジェクトマネジメントの実務経験が必要です。最終学歴によって必要な実務経験の期間は異なり、具体的には下記のとおりです。
■PMP資格の受験要件
最終学歴 | 必要なプロジェクトマネジメントの実務経験 |
---|---|
高等学校卒業または海外の同等資格 | 5年(60ヵ月)以上の実務経験 |
4年制大学卒業または海外の同等資格 | 3年(36ヵ月)以上の実務経験 |
大学院卒業または海外の同等資格、あるいはGAC認定プログラムによる学士号取得 | 2年(24ヵ月)以上の実務経験 |
※GAC(PMI Global Accreditation Center for Project Management Education Programs)とはPMIが母体の国際認定機関。
プロジェクトマネジメントの実務経験以外には、PMI本部が認定する35時間相当の公式研修を受講する必要があります。具体的には、下記のような研修が該当します。
<PMI本部の公式研修の例>
・PMI認定トレーニング・パートナー(ATP)による研修
・PMI支部のプログラム
・雇用者/企業がスポンサーとなっているプログラム
・トレーニング企業またはコンサルタント(トレーニング・スクールなど)
・遠隔教育企業(コース修了評価が含まれていること)
・総合大学/単科大学の継続的な学術教育プログラム
PMP資格受験にあたってはいずれかの公式研修を終え、各機関に修了証明書を発行してもらわなければなりません。自主学習だけでは要件を満たさないので、注意が必要です。
PMP資格の受験料
PMP資格の受験料は、下記のとおりです。PMI会員と非会員で、受験料が異なる点に注意してください。
初回受験料 | 再受験料 | |
---|---|---|
PMI会員 | 約6万3,000円(405ドル) | 約4万2,000円(275ドル) |
PMI非会員 | 約10万1,000円(655ドル) | 約5万8,000円(375ドル) |
※いずれも1ドルあたり154.6円で計算
PMP資格の出題範囲と試験内容
PMP資格の試験は「I. 人」、「II. プロセス」、「III. ビジネス環境」の3領域から出題されます。それぞれの問題数と割合は下記のとおりです。
■PMP資格の出題範囲
領域 | 問題数 | 割合 | タスク数 | イネーブラ数 |
---|---|---|---|---|
I. 人 | 76問 | 42% | 14 | 49 |
II. プロセス | 90問 | 50% | 17 | 61 |
III. ビジネス環境 | 14問 | 8% | 4 | 19 |
合計 | 180問 | 100% | 35 | 129 |
PMP資格の試験内容は、3領域にひもづく「タスク」と「イネーブラ」について問われます。領域は、プロジェクトマネジメントの実務において不可欠な知識エリアを指します。タスクは、各領域でのプロジェクトマネージャーの基本的な責任です。イネーブラとは、タスクに関連する作業の具体例を指しています。関係性としては、下記のようになっています。
■試験内容:領域とタスク、イネーブラの関係性
領域 | タスクの例 | イネーブラの例 |
---|---|---|
I. 人 | プロジェクトの合意に向けて交渉する |
・合意するための交渉の範囲を分析する ・優先順位を評価し、最終目標を決定する ・プロジェクトの合意に関する目標の達成を評価する ・合意に向けた交渉に参加する ・交渉戦略を決定する |
II. プロセス | コミュニケーションを管理する |
・すべてのステークホルダーのコミュニケーション・ニーズを分析する ・すべてのステークホルダーのコミュニケーション方法、チャネル、頻度、 詳細レベルを決定する ・プロジェクト情報を伝え、効果的に更新する ・コミュニケーションが理解され、フィードバックが受け入れられたことを確認する |
III. ビジネス環境 | プロジェクトのベネフィットと価値を評価し、実現する |
・ベネフィットが特定されているか調査する ・進行中のベネフィット実現でのオーナーシップに関する合意を文書化する ・ベネフィットを追跡する測定システムが導入されていることを検証する ・価値を示す成果オプションを評価する ・ステークホルダーの価値獲得の進捗状況を評価する |
PMP資格試験で出題されるのは180問で、230分間(10分間の休憩2回を挟む)で回答します。ただし、予備問題5問以外の175問が採点対象なので注意が必要です。
なお、仮に不合格になった場合でも、受験資格のある1年以内に、3回まで再受験できます。
PMP資格の更新にかかる費用
PMP資格の取得後は、CCR(Continuing Certification Requirements)と呼ばれる3年間の更新サイクルごとの更新手続きが必要です。この期間のうちに、60PDU以上を取得しなければなりません。
「PDU(Professional Development Units)」とは勉強時間を表す単位で、1PDUにつき1時間相当です。つまり、PMP資格維持のためには、3年間で60時間相当のプロジェクトマネジメントに関する勉強時間を確保する必要がある点に注意してください。
PMP資格を取得するメリット
PMP資格の取得は、ビジネスパーソンに多くのものをもたらします。ここでは、PMP資格取得のメリットについて解説します。
スキルアップやキャリアアップにつながる
PMP資格を取得するメリットとして、スキルアップにつながることが挙げられます。これは学習過程でプロジェクト事例をもとにしたプロジェクトマネジメントに関する体系的な学びを得られるだけでなく、学んだ内容を実際のマネジメント現場で活かして、さらにブラッシュアップすることができるからです。また、PMP資格の取得において得た知識をチーム内に共有かつ実践すれば、プロジェクトメンバーのスキルも同時に向上するでしょう。
さらに、希少性の高いPMP資格を得たことで、社内的な評価が上がり、キャリアアップも期待できます。
人脈が広がる
PMP資格の取得は、ビジネスにおいて必要な人脈を広げることにも貢献するでしょう。PMP資格はプロジェクトマネジメント研修への参加が求められ、資格保有後も、PMI日本支部会員になればPMIの部会や研究会・セミナーなどへ参加可能です(なお、PMI日本支部会員の入会はアメリカPMI本部の入会が前提)。
このような機会で高い目的意識を持つさまざまな職種の人と情報交換することで、有用な人脈づくりができるのはいうまでもありません。場合によっては、PMP資格を介した交流が、思いがけないような新しいビジネスにつながる可能性もあります。
年収アップにつながる
PMP資格は、取得に伴ってスキルアップやキャリアアップでき、それが結果として年収アップにつながるというメリットもあります。これは、PMIが公表する「Earning Power」において、日本でPMP資格を取得した人の平均年収は約1,023万3,000円(6万6,188ドル、1ドルあたり154.6円で計算)とされています。
ちなみに、国税庁が2024年9月に公表した「令和5年分 民間給与実態統計調査」では、1年を通じて勤務した給与取得者の平均給与額は460万円です。PMP資格を取得する層は、その平均を大きく上回っていることがわかります。
転職の際の武器になる
PMP資格取得は転職の際に、強力な武器になることもメリットとして挙げられます。PMP資格はプロジェクトマネジメントスキルの確かな証明になることが理由です。また、PMP資格取得にあたって積み重ねてきた実務経験や身に付けたマインドセットは、プロジェクトマネジメント面で課題を抱える企業にとって魅力的に映るはずです。
また、プロジェクトマネジメントのスキルは、業種や職種を選びません。PMP資格を持つことによって、さまざまな分野の企業から多くのオファーが舞い込むかもしれません。
PMP資格の勉強方法と平均勉強時間
PMP資格はいわゆる難関資格です。取得のためには、一定時間以上の勉強を効率的に行う必要があります。ここでは、PMP資格の勉強方法と平均勉強時間について解説します。
PMP資格の勉強方法
PMP資格の勉強方法は、試験内容のガイドラインである「プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル(PMP)試験内容の概要」(ECO:Examination Content Outline)を活用することです。PMP資格の試験は、基本的に「PMBOK(ピンボック)ガイド」をベースとしています。PMBOKガイドとは、プロジェクトマネジメントに関する知識を体系的にまとめている参考書です。
ただし、PMP資格においてPMBOKガイドに記載された知識の理解は前提であり、以前は「PMBOKガイド」の内容が直接問われていたものの、現在はECOが実質的な出題範囲となっています。PMP資格取得に向けた勉強の際にはECOを中心に学ぶことで、効率的な学習が可能です。
PMP資格の難度と平均勉強時間
PMP資格の合格率は公式には明らかにされていませんが、概ね50~60%程度といわれています。極めて高難度の試験といって差し支えないでしょう。
PMP資格取得には、ひとつの目安として100時間が必要とされています。1日あたり2時間勉強しても、すべて網羅するのに50日間はかかります。
ただ、勉強時間が闇雲に長ければいいというわけではありません。勉強時間の多寡にこだわるのではなく、自身が納得できるレベルまで勉強した上で受験することをおすすめします。
PMP資格を取得するまでの流れ
PMP資格の受験をするには、いくつかのステップを踏む必要があります。ここでは、PMP資格を取得するまでの流れについて解説します。
1. PMIアカウントの登録
PMP資格の受験に臨むには、まずアカウント登録する必要があります。アメリカのPMI公式サイトへアクセスし、個人情報(Personal Information)に加えて、社会人経験年数やプロジェクトマネジメントの経験年数など(Tell Us More About You)のほか、パスワードの情報(Account Information)を記入し、アカウント登録します。
アカウント登録は無料で行えますが、すべて英語で書かれたサイトなので記入時には注意しましょう。また、アメリカPMI本部の会員登録は任意ですが、PMP資格の受験料が割引になります。ただし、アカウント登録とは別物なので、混同しないようにしてください。
2. 受験申請・受験料の納付
続いて、PMP資格の受験申請を行います。アカウント登録後、あらためてPMI本部のウェブサイトで受験申請手続きを行ってください。最終学歴やプロジェクトマネジメント経験のほか、公式研修受講情報などを入力し、審査が完了すると、PMI本部から4~5日後にメールが届きます。メールの内容を確認した上で、クレジットカードやデビットカードで指定の受験料を支払いましょう。
3. 試験の予約
試験の予約は、コンピュータによるテストであるCBT(Computer Based Testing)を管理するピアソンVUEのウェブサイト上にある「プロジェクトマネジメント協会(PMI)」ページから行います。申込みでは予約可能な試験日と試験会場が表示されるので、希望する試験日と試験会場を選択します。試験会場はテストセンター受験のほか、オンラインでの受験も選択可能で、オンラインの場合は試験開始時刻も選択可能です。
4. 試験・結果発表
試験日に、テストセンターまたは自宅・職場からオンラインで、CBTによる解答を行います。試験結果の発表は即日行われ、6~8週間前後にPMI本部から合格認定証などが送付されます。
まとめ:計画的な勉強でPMP資格を取得しよう
PMP資格は、昨今のビジネスシーンにおいて需要が高まっている国際資格です。プロジェクトマネジメントに携わるのであれば、客観的にスキルや経験を証明できるPMP資格は、取得する必要があるといえます。
ただし、合格率は50~60%で、取得難度は高いのも事実です。プロジェクトマネジメントの実務経験を活かしながら、着実に勉強していきましょう。